歩兵の移動、機動などについて記述した解説はよく目にすることがありますが、目的に特化した戦闘について詳細を解説したページはあまり多くありません。
本稿では、APCやIFVを含めた戦闘車両に歩兵戦力のみで対抗する場合を想定した解説を行います。
敵の戦闘車両に対して、有効な打撃策(ATM等)を持たない場合には撤退しましょう。
撤退や遮蔽を取るなどができない場合には、一方的に蹂躙されます。
歩兵が対戦車戦闘を行う際には、必ず周囲に隠匿性の高い遮蔽物のある地域(森林、市街地、耕作地)などで遮蔽を確保しながら戦闘するようにしましょう。
また市街地や森林など、戦闘車両の行動が大きく制限される場所では細かな動きのできる歩兵のほうが優位性を持って戦うことができます。
Keyholeとは「鍵穴」を意味します。この場合は、射手の両サイドに壁があり後方の撤退先が確保されている入り江のような地形を指しています。
このような地形では、戦闘車両に対する攻撃角度を制限することにはなりますが、一方で攻撃した敵からの応射を防ぐことができます。戦闘車両には強力な火砲が搭載されていますが1台の車両が一度に攻撃できる地点は一般に1箇所のみです。
対戦車火器の射手が'Keyhole'ポジションにいることが望まれる一方で、観測手や側面援護に入る歩兵には広範囲を観測できる高台、尾根の上等で即時に撤退が可能な地域で観測を行うことが望ましいでしょう。
一般に、戦闘車両は対戦車火器の射手を発見するまではそれに向けて攻撃することはできません。射手は常に隠密性を確保した状態で行動することが望ましいです。また対戦車火器を用いて攻撃する際には、戦闘車両の後方や側面など視界が制限される方向から攻撃するようにしましょう。火点が特定されにくくなります。
また、射手の位置が戦闘車両に露見した場合は必ずその場から移動しましょう。撤退する際には煙幕を展開するなど反撃に対する防護策を取ったうえで行動しましょう。
1箇所からの1度の攻撃は、戦闘車両にとっては反撃する箇所が少ないため、反撃を受けやすくなります。多方面からの多段攻撃(各個射)が車両撃破の確立を向上させ、射手が露見し攻撃される可能性を低くします。
またこの際には各射手の射線がお互いに重ならないように注意しましょう。無誘導の対戦車火器の場合目標に当たらない、あるいは目標で跳弾した弾体が味方の射手に対するリスクとなりえます。
参考画像においては、3両目の車両に対して多方面からの射線が通り効果的です。降車し展開している随伴歩兵に対しては、側面援護により対戦車火器の射手に対しての応戦のリスクを下げることができます。
また、1度射撃した後に射手は点線のルートを移動して、次の火点より再攻撃を行うことができます。
都市部における歩戦協調下にある目標への攻撃 参考画像
戦闘車両に対して、歩兵戦闘車から降車した歩兵など、随伴となる歩兵が付いている場合があります。この場合には戦闘車両に対する攻撃は挑戦的なものとなります。(戦闘車両への攻撃により歩兵からの反撃を受ける、あるいは歩兵への攻撃により戦闘車両からの反撃を受ける為。)
最も有効的な手段は「随伴歩兵を戦闘車両から分離させる」ことにあります。一般に対戦車火器を有する射手は、歩兵に対して脆弱です。側面は上でも述べたとおりに側面援護となる歩兵が展開していることが望ましいです。
参考画像においては、射手からの射線が2方面に対して取れている状況で、かつ建物52'に対する敵方随伴歩兵からの射線は非常に制限されるものです。
この際に建物43'は側面援護が入っていませんがこれは射線Aから射手が攻撃した際に、敵方随伴歩兵の反撃が想定されるのが建物43'となるためです。
ANTI-TANK Tactics for Infantry Units, Major B.B.McBreen, 2001
Field Manual 3-06.11 Combined Arms Operation in Urban Terrain , department of army, 2002