分隊長などの上級役職に就くための登竜門、それがファイアーチーム・リーダー(Fireteam Leader, FTL)です。楽しく、そしてテンポよいCoopの進行には、FTLの活躍があってこそ、と言っても過言ではありません。
FTLは数あるリーダー職の中でも一番責任が小さく、Arma 3 Coopを始めたばかりの人でも非常にとっつき易い役職です。CCG鯖のArma 3 Coopでファイアーチーム・リーダーをこなせればより楽しいCoop体験ができるでしょう。
そんなFTLの役職ですが、具体的に何をする人なの?怖くないの?という人のために、これから解説していきます。
(写真はHBOのドラマ「ジェネレーション・キル」より、チーム1-BのFTLであるトニー・”ポーク”・エスペラ三等軍曹)
FT(Fireteam, FT)とは、歩兵で構成されるグループの中でも基本となる単位で、(ほぼ)常に一緒に行動する“班”のことをいいます。ちなみに日本語にすると「班」、FTLは「班長」です。
米陸軍や米海兵隊を例に挙げると、班は次のように構成されます。
米陸軍
米海兵隊
この4人1班がFTと呼ばれます。このFTが2個~3個集まると分隊(Squad)になります。
米陸軍の分隊構成は、
となり、米海兵隊(~2019年頃)だと
となります。
ファイアーチーム・リーダー(Fireteam Leader, FTL)とは、FTを統率する人です。FTLは、分隊長の指示を受けてFTL以下4人の班を率いて行動し、作戦に従事します。
米陸軍のフィールドマニュアル「FM 3-21」によると、FTおよびFTLは次のように定義されています。
ファイアーチームは、戦闘においてチームワークを発揮できる小隊以下に所属する戦闘単位である。(中略)ファイアーチームとは、自己充足のチームである。(中略)チームリーダーはチームのロールモデルとして指揮・統率をつかさどり、チームを率いる役職である。
かみ砕いて言えば、FTは「フットワークがある程度軽く、自分たちだけで戦闘能力を発揮できるグループ」、FTLは「部下のお手本になるような行動で、部下と自らを率いていく役職」というわけです。
FTLに着任したら、まずは部下にどんな役職がいるかを確認しましょう。前項「そもそもFTLって何さ、FTって何さ」で触れたように、FTはFTLを含めた4人の兵から成ります。その4人ともがそれぞれ違う役を担い、FTに、ひいては分隊に貢献します。
先ほど同様、米陸軍「FM 3-21」には次のようにあります。
・ファイアーチームとは図で示す通りの、自己充足のチームである。
・分隊支援火器手はチーム内において火力基盤を担い、範囲内の目標に対し小火器による継続的な制圧射撃を行うことのできる能力を持つ役職である。
・小銃手は点目標に対し精確で殺傷能力のある火力をもたらす役職である。
・擲弾兵は点目標および面目標に対し高性能爆薬による間接射撃を行う役職である。
・チームリーダーはチームのロールモデルとして指揮・統率をつかさどり、チームを率いる役職である。
これをかみ砕いて言うと、
FTだけである程度のことができる
オートマチック・ライフルマン・・・弾丸をばら撒き、敵をビビらせてみんなが撃たれないようにする
ライフルマン・・・敵を1人ずつ確実に倒していく
グレネーダー・・・グレネードランチャーでみんなが倒せない敵を倒す
チームリーダー・・・部下3人に指示を出し、部下のお手本となる
といった感じなります。FTL最初の仕事は、部下を知ることです。
FTLの仕事の大部分を占めるのが、「指示を出す」ことです。自分が動くのではなく、部下を動かすのがFTLの仕事です。ですので、指示を出すことに戸惑わないようにしましょう。部下はFTLの指示を尊重し、行動に移してくれます。部下を信じ、自分を信じて指示を出しましょう。
良いリーダーは的確な指示を出すリーダーです。では悪いリーダーは?
間違った指示を出す人=悪いリーダーではありません。それは単なるミスであり、決して悪いリーダーのレッテルを貼られる理由にはなりません。
「指示を出さないリーダー」こそ、悪いリーダーなのです。FTLの指示がないと、部下はどうしていいかわかりません。間違ってもいいので、ひとまず指示を出しましょう。もしそれが間違っていたとしても、分隊長や熟練した部下が軌道修正をしてくれます。
出撃前からFTLの仕事は始まっています。部下たちが適切な武器・弾薬、装備を持っていっているか、無線は通じているか、どの車両に乗ればいいのか、作戦地域にはどのようなルートで移動するのか・・・それらを全て確認しなければなりません。
装備
まずは、自分の部下とその装備を確認しましょう。CCGサーバーのArma 3 Coopで推奨されるFT各員の装備は以下の通りです。
役職 | 武器 | 例えば | 弾薬数 | その他携行物・備考 |
---|---|---|---|---|
TL | 小銃 | 米軍・・・M4A1など 露軍・・・AK-74など |
6~8マガジン | 場合によってはグレネードランチャー付き の小銃+HE擲弾・スモーク擲弾 |
AR | 軽機関銃 汎用機関銃 |
米軍・・・M249など 露軍・・・PKPなど |
400~800発 | |
GRN | グレネードランチャー付き小銃 | 米軍・・・M203かM320のついた小銃 露軍・・・GP-25がついた小銃 |
6~8マガジン 15~20発の擲弾 |
|
RFLM | 小銃 | 米軍・・・M16A4やM4A1 露軍・・・AK-74など |
6~8マガジン +FT各員に渡す予備マガジン |
対戦車火器 (使い捨てロケットランチャーなど) |
無線通信の確認
ある程度装備が整ったら、次は無線通信の確認をしましょう。
レディオ・チェックと呼ばれるこの手順は、「分隊内で互いに無線通話ができるか」を確実にするためのもので、これが終わらないと伝達事項がきちんと伝わらず、出撃までに時間がかかってしまいます。必ず最初に行うようにしましょう。
FTLが自発的にレディオ・チェックを行うことで、FTの各員も応じるようにレディオ・チェックをしてくれるでしょう。
車両の有無、および指定車両の確認
分隊長、および部下との無線通信を確立したら、次は移動手段の確認です。
例えば、車両で移動する場合だと通常3~4台の装輪車両が出てくるはずです。この時、1つのFTに対しおおむね車両1台が割り当てられるはずです。分隊長に指示を仰ぎ、自分と部下が乗る車両を指定してもらいましょう。
車両を指定してもらった後は、予備の弾薬や対車両火器、爆薬、医療品などを車両に詰め込みましょう。この時も、部下の各員にそれぞれ「〇〇さんは爆薬を積んで」「✕✕さんは対戦車火器を積んで」などと名指しして、物資を指定し、積み込みを手伝ってもらいましょう。
作戦地域への移動経路の確認
全ての準備が整った部下たちは、すでに自分たちの車両に乗り込んで待機しています。この頃には分隊長から「チームリーダー会議」に呼ばれていると思います。チームリーダー会議では、
などの情報が共有されます。全て覚える必要はありませんが、重要だと思った点や分隊長が強調した点などは覚えておきましょう。もしわからなくなったら、適宜分隊長に質問しても構いません。
お待ちかねの出撃です。部下が待つ車両に戻り、分隊長の号令と共に作戦地域へと出撃しましょう。
ドライバーには、部下の中からインゲームでの運転を経験したことのある人を選んで、先に指定しておきましょう。FTLは助手席に乗り、マップやGPSを見ながら道案内をしてあげます。移動経路を分隊長から直接聞き、一番よく理解しているのはFTの中ではFTLだけでしょうから、道案内役としては最適です。
車列を組む際は、基本的に一列縦隊になります。車間をしっかりと取り、事故防止に努めましょう。
途中で交戦した際の動きも分隊長から指示されているはずですから、咄嗟の待ち伏せや交戦に備えて、常に窓の外を見渡すようにしましょう。
徒歩の場合は、基本的に隊形を組んで移動します。以下に主な5種類の隊形を順に解説していきます。
Wedge:ウェッジ、くさび隊形
(右図は、「ウェッジ・レフトヘビー」、左右が逆の「ウェッジ・ライトヘビー」もあります。)
ウェッジは、最も基本的な隊形です。特に指示のない場合、この隊形で動きましょう。
図のような配置に自分および部下を並べ、進んでいきます。この隊形は、前と左右どの方向から攻撃されても動きやすい隊形とされています。
File:ファイル、一列縦隊(いちれつじゅうたい)
ファイルは、要するに“縦一列”です。急いで移動するときや、車両を伴って道路脇を移動する際に用いられます。
Line:ライン、一列横隊(いちれつおうたい)
ラインは、要するに“横一列”です。平原での移動や、敵の施設、トーチカ等を一方向から包囲する際に用いられます。
Column:コラム、二列縦隊(にれつじゅうたい)
コラムは、“二列縦隊”の一つで、左の列と右の列とで前後をずらしてあるのが特徴です。この隊形も、各自が前と左右を見ることにより進行方向に対する警戒を緩めずに進んでいくことができます。
Echelon:エシュロン、梯陣(ていじん)
(右図は「エシュロン・レフト」、左右が逆の「ウェッジ・ライトヘビー」もあります。)
エシュロンは、左右どちらかに“ななめ”に陣形を組み、それぞれの方向に対しての警戒を強くしたまま移動できる隊形です。
エシュロン・レフトは進行方向とその左側を、エシュロン・ライトは進行方向とその右側を、それぞれ重点的に警戒します。
FTLの本領発揮、いよいよ戦闘です。分隊長の指示に従い移動します。移動先での細かい動きは、おおむねFTLに一任されます。4人からなるFTで出来ることは実際には限られています。逆を言えば、4人で出来ることを最大限やりつくすことがFTの使命であり、それを確実に遂行するのがFTLの使命なのです。
戦闘のイロハについて細かくは書きません。詳しく知りたい人は米陸軍フィールドマニュアル「FM 3-21 Chapter 1 Section I – Fundamentals of infantry platoon and squad operations」に詳しく書いてあるはずです。
戦闘中に最もFTLが集中しなければならないことは、「状況把握と適切な指示」です。時には部下を目や手足として使わなければなりません。
例
例えば、隊形の項で書いた「ウェッジ・ライトヘビー」を組んでいるときに、右側から発砲を受けたとします。
この時FTLは「ライトヘビーを組んでいる」「進行方向の右側から発砲を受けた」という「状況把握」を瞬時にこなす必要があります。もしわからなければ、部下に「どの方向から攻撃を受けた」か質問しましょう。撃たれたことを報告した部下が教えてくれるはずです。
次に「指示」ですが、この場合だと、すぐさま敵の頭を押さえるためにARの協力を仰がなければなりません。ウェッジ・ライトヘビーではARは隊形の左側にいるので、すぐさま隊形の右側に移動し、制圧射撃を開始してもらいましょう。「AR、隊形右側に移動、制圧射撃開始!」といった具合に指示を出します。
具体的かつ簡潔、そして的確な指示がFTを導くカギです。
戦闘もひとしきり堪能した後は、自分と部下の状態を確認しましょう。確認するのは3つの項目―弾薬、負傷者、装備の残数です。米軍ではこれをACEリポートといい、戦闘終了時にFTLが自分のFTに関するこれらの情報をまとめ、分隊長に報告しなければなりません。
ACEリポート
Ammo、Casualty、Equipmentの頭文字を取って「ACEリポート」です。ACEリポートの手順は次のようになります。
A・・・Ammo(アモ)、自分と部下の弾薬の残(ざん)を確認します。弾薬が欠乏している仲間がいたら、FT内で分け合いましょう。ここでいう弾薬とは、各員が携行している小銃弾や機関銃弾、グレネードの擲弾のことをいいます。
C・・・Casualty(カジュアルティー)、自分と部下の負傷状況を確認します。誰がどの程度の怪我をしているのか、衛生兵の手当てを受ける必要があるのか、はぐれた仲間はいないか、惜しくも倒れてしまった仲間はいないかを確認しましょう。
E・・・Equipment(エクイップメント)、自分と部下各員が携行する特殊装備の残を確認します。ここでいう特殊装備とは、「作戦遂行に関わる重要な装備」を指します。例えば、「破壊ミッションにおけるC4爆薬」や「対戦車戦闘が予想される作戦においての対戦車火器」のことです。残数が十分にあればOKですが、もし足りなければ分隊長一緒にと対策を考えましょう。
これらの情報を全てまとめて、分隊長に簡潔に報告します。「レッドチーム、弾薬残よし、負傷者1名・軽傷のため継続戦闘可能、C4爆薬が残り1つ」といった風に簡潔に、要領よく報告しましょう。
FTLに着任して間もないころは、物事がうまくいかない時も多々あります。時には全てがうまくいかず、イライラしてしまうこともしばしばあるでしょう。しかし、そんな時こそ焦ってはいけません。深呼吸をし、自分が、そして部下が、いま何ができるのかを冷静に見つめ、問題へどう対処するのか考えましょう。ピンチこそ、チャンスをつかむタイミングなのです。一旦ライフルから手を離し、状況を見極めましょう。部下や分隊長に質問しましょう。きっと答えが見つかります。
部下が失敗してしまったときも同様に、ひと呼吸置いて、冷静になって部下を励ましてあげましょう。失敗して落ち込むのは誰しも一緒です。そんな時は怒鳴り散らすのではなく、“仕方ないよ、何とかなるよ”の精神で部下に接してあげましょう。
1つだけ注意する点があるとすれば、それは「その場で反省会を開かない」ことです。戦闘中に「いまのはダメだ。もっとこうしたほうがいい。なぜなら・・・」と講釈を垂れているうちにその部下は敵に撃たれて倒れてしまいます。反省会など後でいくらでもできますし、もしミッション終了後までに部下の失敗のことを忘れていたとしたら、それはそんなに重要ではなかった、ということでしょう。
いかがでしたでしょうか。ススメシリーズ第6弾はちょっと長くなってしまいました。それだけFTLという役職は奥深い、ということなのでしょう。
FTLという役職は実にいろんなことを学べます。人を率いる楽しさが一番大きいのも、この役職かもしれません。このページを最後まで読んで下さった方には、ぜひFTLに挑戦して頂き、Coopの楽しさを更に味わってほしい、そう心から願っています。