小隊先任軍曹を、あたかも「”名誉”ライフルマン」のように解釈する人が後を絶たない。小隊先任軍曹とは、小隊長の使い走りなどではなく、常に特定の仕事のある役職だ。小隊先任軍曹は常に小隊長からの「指示待ち」をしてはならず、絶えず自らの仕事をしていなければならない。小隊先任軍曹は、小隊長からの指示なしでそれらの仕事を遂行することにより、小隊長はよりマクロな視点での部隊指揮に専念できるのである。以下に紹介するのは全て小隊先任軍曹が常にしなければならない仕事である。
- 小隊が適切かつ指示通りに配置されるようにする。隷下にある各分隊を素早く配置し、最前線に立つ隊にどこに行けばよいかを指示する。また同時に、最後方に立つ隊へ最前線の隊がどこに位置するかを教える。このとき、各分隊が適切なスペースを開けており、また必要に応じて、小隊本部が合流できるスペースを同時に確保できるように指示を出す。
- 弾薬・武器が適切に行き渡るようにする。機関銃などの特殊武器に関して、小隊全体に適切に配分され、その状況を正確に把握し、常に補給を受けられるよう準備を施す。
- 各分隊の通信を確立させる。隊長レベルの人間が無線に応じないときは手助けをし、通信を確立させる。
- 小隊が(何らかの理由で)留まっている際の全周囲警戒を確立する。小隊長が各分隊に警戒指示を出していない時は、これを出す。必要に応じて観測地点(OPないしLP)を指定し、隷下の隊にOP・LPへ監視員を出すよう指示する。
- 小隊への派遣隊や、小隊からの分遣隊がある場合(JTACやFO、Medicなど)は、小隊先任軍曹の隷下に入る。作戦の各段階に応じてどこに位置取るかを話し合い、また彼らに指揮官の意図に沿った自分たちの仕事・使命を理解させる。
- 小隊の正確な人数把握を行う。小隊長は常に小隊の状況を知る必要があるためである。戦闘終了時に、各分隊長による人数把握ができない場合もあるため、小隊先任軍曹はより素早く簡潔に死傷者報告の取りまとめが出来るようにならなければいけない。
- 作戦の計画段階において、小隊長にアドバイスを行う。小隊長との1対1の会話によって作戦会議が行える。必要に応じて、OAKOCやMLCOA、METT-TCなどの各種レポートを簡潔に用意する。行動予定を小隊長と共に分析する。小隊長はよりマクロに行動予定を立てるため、小隊先任軍曹はそれよりも小さいレベルの動きを考え、上申しなければならない。
- 小隊長は小隊先任軍曹に対しOPORDの第4章をまとめるよう要請することがある。小隊先任軍曹はそれをまとめ小隊長に報告しなければならない。
- 小隊の間隔や移動をコントロールする。各分隊の間隔が十分に空くようにする。小隊が正しい方向へ進み、全てのCPにおいて適切な行動を取るようする。小隊先任軍曹は小隊の案内役であり、ペースメーカーである。
- 周囲の地形を分析する。小隊が待ち伏せを受けた際やより優位なポジションにつく際に、小隊長にキー・テレーンを素早く伝えなければならない。
- 接敵方位を特定し、各分隊が掩蔽へ移動する手助けをする。移動中の地形分析が重要になってくるのがここである。例えば、移動中に丘を見つけた時は、隷下の隊にその丘が射撃に際し有利な場所になることを伝える。各分隊が敵の回り込みを防げるようにする。小隊長を手助けし、各分隊長が指示に応じるようにしなければならない。
- 無線を聞き取り、地図にマークする。重要な無線のやりとりをメモに取って小隊の動きを記録する。この際、残弾数や負傷者の有無も同時に記録する。
- 負傷者が発生した際、必ず治療を受けられるようにする。状況を分析し、衛生員を派遣すべきか、もしくは負傷者を衛生員のもとへ連れてくるべきかを判断する。後者の場合、自分自身で負傷者を回収に向かうか、同分隊(ないし他分隊)のライフルマンに担がせてCCPまで運ばせる。もし当該ライフルマンが持ち場を離れられない場合は、どの分隊でもよいので支援兵科を駆り出し、負傷者を担がせる。
- 各分隊が拡がり、適切なフォーメーションをとるようにする。攻撃の間、各分隊の間隔、移動速度、フォーメーションが維持されるようにする。
- 敵の回り込みや反撃を予測する。
- 自軍・敵軍双方の場所・動きを常に追い、把握する。
- 必要に応じて各分隊を補給する。弾薬・武器を各分隊に均等に割り当てる。弾薬の余剰がある分隊から欠乏している分隊への供給を行わせる必要がある。
- 隷下の分隊に敵のいた地点のクリアリングを指示する。
- 周辺警戒が適切に行われるようにする。
- 各分隊のACEリポートをまとめ、適切に対応するための準備をする。
- 小隊長にSITREPを上げる。小隊先任軍曹が把握している全てを小隊長に報告し、また必要に応じて意見を上申しなければならない。
- 必要に応じてCASEVACを計画・要請する。
- 小隊が動けるようになったのを確認し、小隊長にそれを伝える。小隊が(何らかの理由で)留まっている際は、周辺警戒を確立させる。自身の判断で周辺警戒の計画を決め、必要に応じて各分隊の位置、観測員の配置、パトロールの配置、防衛拠点の設営を行う。
- 小隊長の使命を常に推測できるようにする。作戦における小隊長の意志・作戦の実行計画を理解しなければならない。なぜなら、小隊長が死傷した際に一から作戦の実行計画を立てることはできないからである。現在の計画を実行し、小隊長の意志に沿った意志決定を行う。この時、作戦の実行計画から逸脱するよう指示を出してはならない。
- 小隊長に、常に自分が何をしているのかを把握してもらう。小隊先任軍曹は各分隊に指示を出す権限があるが、同時に小隊長の指示と相反しないようにしなければならない。
- 乗車している隊と降車している分隊が存在するとき、小隊長は降車している分隊を率い、小隊先任軍曹が乗車している分隊を率いる。小隊先任軍曹は車両隊の指揮をする準備が出来ていなければならず、また、降車した分隊の移動を支援できる配置を知っていなければならない。
- FM 7-22.7 The Army Noncommissioned Officer Guide, United Status Army
- FM 3-21.8 Infantry Rifle Platoon and Squad, United Status Army
- The Platoon Sergeant in the Advance and Attack, British Army